何のために経営するのかと聞かれたら、どのように答えるでしょうか。「収益を上げるため」「利益を追求するため」「業績を高めるため」といった回答をする経営者も多いでしょう。しかし、いずれの答えも正しいとは言えません。
業績を軌道に載せるためには、経営目的を正しく定め、明確化しておく必要があります。そこで今回は、経営の目的や目的達成のために経営者がやるべきことなどを詳しく解説します。
業績を高めるのが経営の目的ではない
経営の目的は、業績を高めることではありません。しかし、多くの経営者が業績向上を目的としているのも事実です。有名な経営者であっても、経営の目的は「業績を永続的に高めること」と答える人は少なくありません。「企業規模を大きくする」「業界内で1位になる」「シェアを高める」などを目的にしている経営者も多いでしょう。
しかし、このように「実績」を目的にするのは間違いです。実績はあくまでも経営の「結果」に過ぎません。業績だけを求めると従業員に無理な労働を強いることもあります。
きついノルマを課せられた営業担当者が鬱になってしまう可能性もあるでしょう。このような事態に発展すると、逆に業績低下につながる恐れがあるので注意が必要です。
経営者はあくまでも「自分が社員だったらどう思うのか」という仮定のもとで、どのような指示をしてほしいのか、どのように考えてほしいのかを熟慮する必要があるでしょう。
立派な業績を上げている企業と、そうではない企業は目的が違います。戦略や戦術などではなく、目的の違いが業績に大きな差を生じさせているのです。
社員や会社に関りのある人を幸せにするのが経営
経営者が目指すべきことは、「社員や会社に関わりがある人を幸せにすること」です。収益だけを目指していると、必ず従業員や資金繰りなどに悪い影響を与えてしまいます。
世界最高の実績を叩き出した経営者として知られる稲盛和夫氏も、経営の目的は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」と言っています。圧倒的な業績を上げている人物がこのような考えで経営をしている以上、反論の余地はないでしょう。実績のない学者や評論家の言葉には説得力がありません。
自社社員の幸せだけではなく、外注先や仕入先の社員とその家族の幸せも考える必要があります。地域住民の幸せをも考慮する必要もあるでしょう。さらに重要なのは、「顧客やこれから顧客になろうとしている人の幸せ」になります。最後に考えるべきは株主の幸せです。
幸せを追求するために経営者は何をすべきなのか
会社や会社に関わりのある人を幸せにするために、経営者何をすべきなのでしょうか。もっとも重要なのは「継続すること」です。人を幸せにすることを踏まえながら経営をすれば、中長期的な視点で物事を見られるようになります。
実績だけを追求すると、「コストを下げる」か「売上を上げるか」の二択しかありません。しかし、売上を上げるは極めて困難です。近年では価値観の多様化やインターネットの普及などによって従来の営業戦略が通用しなくなっているため、売上向上の難易度は高まっています。
このような現状によって、経営者はコストを下げる選択をする傾向があります。たとえば、正社員を非正規社員にしたり、3人だった部署を2人体制にしたりするなどです。
このようなコストダウンは、一時的に効果が現れるかもしれません。しかし、コスト削減を繰り返している経営者が、会社に関わる人を幸せにできるわけがないのです。無理なコストダウンは、従業員の不平不満につながり業績の悪化を招きます。
顧客や自社・他社の社員とその家族を幸せにすることを意識しながら経営を継続すれば、コストダウン以外の中長期的な方策が見えてくるはずです。
費用対効果を考慮することも大切ですが、それだけを追求して機械的に人員整理を行うのは経営の目的と言えないでしょう。
顧客だけではなく、従業員にも感情があります。その感情こそが、企業の中長期的な業績を左右するのです。
まとめ
何のために経営をするのかという問題は、顧客や従業員の感情を理解することで解決します。経営者が目指すべきは、業績の向上ではありません。業績の向上は、あくまでも結果です。
経営を軌道に載せるためにも、顧客や従業員、地域住民などの幸せを最優先としたうえで、結果に結びつくような施策を展開するようにしてください。