経営者であれば誰でもビジョンを持っていると思います。しかし、そのビジョンが曖昧であったり、誤っていたりするケースは珍しくありません。それに気づいていない経営者も多いのです。
経営者にビジョンがない会社は、衰退の一途をたどります。企業の中長期的な成長と理想の未来像を描くためにも、経営ビジョンの重要性を確認しておきましょう。
今回は、経営ビジョンの作成方法や、経営ビジョンと経営理念の違いなどについて詳しく解説します。
経営者にビジョンがない会社は衰退する
経営者にビジョンがない会社は、衰退する確率が極めて高くなります。特に、中小企業の経営者に確固たる経営ビジョンがない場合は、事業の迷走と業績低迷に陥りやすいので注意が必要です。
経営者にビジョンがない企業は、下記のような弊害も起こりやすくなります。
・行動指針がない
・経営方針が頻繁に変わる
・商品開発方針が明確ではない
・顧客の不満を放置する
・組織内の協力体制が希薄
このような状況になっているのであれば、経営者にビジョンがないと言われても仕方ありません。ビジョンがなければ経営そのものが右往左往するため、組織力だけではなく生産性や効率性も低下してしまいます。
経営ビジョンと経営理念の違い
経営ビジョンと混同されやすい言葉に「経営理念」があります。経営ビジョンと経営理念は混同されがちですが、それぞれの意味は明確に異なるので、違いを確認しておきましょう。
経営ビジョンとは、企業の理想の姿に進むための方向性や将来像のことです。そのため、内外環境の変化に応じて変えていく必要があります。
経営理念とは、経営に関する考え方や価値観のことです。企業の存在理由や経営を行う目的を明文化したものと考えれば、わかりやすいでしょう。なお、経営ビジョンは経営理念に基づいて作成されるのが一般的です。
経営ビジョンの作り方
経営ビジョンは、手順に沿って正しく作成することが大切です。ここからは、経営ビジョンの作成方法を順に解説していきます。
環境分析を行なう
まずは、理想の未来像を描くために市場の環境分析を行います。理想や未来は現状の延長線にあるとは限りません。将来の姿は周辺環境の変化によって異なるのです。そのため、環境分析を行う際にも、将来的な環境の変化を考慮する必要があります。
なお、市場の環境分析には次のような方法があります。
・PEST分析
マクロ環境の分析を行うフレームワークです。
・5フォース分析
競合他社や業界の状況と収益構造を明確にしたうえで、自社の利益を追求するためのフレームワークです。
・3C分析
市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つのCから周辺環境を明らかにしたうえで、今後の経営戦略を導き出す方法です。
・バリューチェーン分析
製品の製造や販売、労務管理などの活動を連鎖して捉え、競合に対する強み・弱みを分析して事業戦略の改善策を探る方法です。
将来のニーズを予測する
ターゲットとしている顧客に喜ばれること、社会的課題として解決すべきことなどを挙げていきます。3年~5年後程度であれば具体的な予想も可能ですが、10年単位での予測は難しくなるでしょう。
そのような場合は「だいたいの予想」で構いません。この段階では、予測されるニーズや課題を挙げていくことが何よりも重要になります。
自社の役割を考える
予測した市場や顧客のニーズに対して、自社が提供できる価値や役割を考えていきます。考えがまとまらない場合には、創業時の企業理念やビジョンを策定した背景などを整理して再確認して、将来あるべき姿を発見する手かがりにしてみましょう。
経営ビジョンを言語化する
この時点で経営ビジョンの大枠は完成しているはずです。そこでここからは、大枠を明文化して、イメージしやすい経営ビジョンに変えていきます。
難解な言葉を使う必要はありません。わかりやすく、従業員からも共感を得られるようなユニークな経営ビジョンを心がけましょう。
従業員に浸透・共感させる
経営ビジョンを作成したら、ビジョンに基づいた経営や事業を行います。経営ビジョンを策定するだけでは意味がありません。従業員に経営ビジョンを伝え、共感を得ることで初めて作成した意味を持つようになります。
従業員への浸透や共感が得られていないビジョンは経営者の妄想にもなりかねません。しかし、厳しい経営ビジョンでも、浸透して共感を得られれば実用性のあるものになります。
まとめ
経営ビジョンというと概念といったイメージも強いですが、企業の理想的な将来を実現するためには必要不可欠と言えます。
ビジョンがない経営者や曖昧な企業は、この機会に経営ビジョンの策定に取り組んでみてはいかがでしょうか。